spider web - 彼は来ない-　op.117

・楽器編成： Marimba Solo
・使用楽器：Marimba (4oct.)
・演奏時間：約4分半
・脱稿日：2012.10.12
・初演日：2013.01.12
・初演者：大澤千紘

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＜解説＞
この曲はスパイダーマンが大好きなマリンバ奏者・大澤千紘さんから依頼を受けて作曲したマリンバ独奏曲で、同氏によって初演されました。
蜘蛛の巣には獲物を捕らえる粘性のある横糸と、横糸の柱となり蜘蛛自身が移動するのに使用する粘性のない縦糸があります。この横糸と縦糸との性格の違いを、演奏者の右手と左手の動きの違いとして活用できないかと考え、獲物の動きを封じる横糸を動きの変化に乏しい右手として、捕らえた獲物のもとへ移動で使用する縦糸を変化の大きい左手として捉えて作曲しました。またクモは、決まったアルゴリズムで単調な作業を繰り返すことで蜘蛛の巣を作るということで、決まったフレーズの繰り返しを多用する楽曲を作ることにしました。
このように蜘蛛の巣に主眼を置いて作曲したこともあり、スパイダーマンを示すテーマや主旋律は登場しません。（もちろん、スパイダーマンが助けに来るように共演者が颯爽と現れる！という展開もありません。）楽曲は最後にささやかな旋律を悲しげに弾いて曲を閉じます。

また人というものは面白いもので、欲しいものを買う前に厳選に厳選を重ねたり、旅行に出かける前に雑誌やネットで情報を集めたり、心を捉えるものに対する事前準備の時間は少々面倒でも楽しいものです。
もし自分が愛してやまないスパイダーマンの蜘蛛の巣に自分が捕えられたとして、やがて彼が縦糸を伝って自分のもとにやってくるとしたら、彼が到着するまでの時間をどのように感じるだろうかと想像しました。会いたくてドキドキして、でも会いたくないような気持ちもあって、早く会いたいけど永遠に会いたくない！みたいな気持ち。彼が来るまで続くそんな気持ち。そんな甘美なときが永遠に続くと状況があるとしたら、心を捕らえられ次の瞬間にも目の前に現れるのではというドキドキが永遠に続くとしたら、それは「彼が来ない状況」なのではと想像し、作曲しました。

スパイダーマンが自身の蜘蛛の巣に人の心を捕えるように、演奏者は自身の音色でお客様の心を捕らえて頂ければと思います。

●DEMO

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