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打楽器を勉強し、独学で作曲し、ときどき鍵盤ハーモニカを演奏する ”ボブ”と呼ばれる音楽家・渡邉達弘のホームページです。

Marimba effectors -for Marimba Duo- op.144

Marimba effectors -for Marimba Duo- op.144

・楽器編成:マリンバ二重奏
・使用楽器:2 Marimbas(4+1/2,4+1/3)
・演奏時間:約5分
・脱稿日:2018.05.26
・初演日:なし
・初演者:なし

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<解説>
この曲は、エレクトリック楽器やDTM・録音編集などで使用される様々な音響効果を人力で再現するという発想から生まれました。
もともとミニマル・ミュージック好きなので"Loop"や"Delay"は当然のものとして、"Harmonics"・"Doubling"・"Pitchshifter"・"Echo"などのエフェクターで得られる音響効果の雰囲気を人力で再現する手法を考え、楽曲に織り込むように作曲しました。
少しずつの変化や発音のズレなど微細なことが、聴き手の印象を大きく変え得ることが面白いと感じているので、例えばいつも目にする風景をいつもと異なる視点から見るように、いつものマリンバの音をいつもと異なる視点から見つめられたら、いつもの風景の中に気づかなかった面白さや美しい景色を再発見できるように、マリンバの魅力の再発見に繋がるかも知れないと考えたのです。
或いは、機械に任せることで様々な利便性を手にすることができる昨今、たまには敢えて人力で行うことでそれまで見つけられなかった意味を見つけることが出来るかも...。などと少々マニアックに思う今日この頃です。

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☆楽譜

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Regolith in the air -宙のレゴリス for Xylophone Trio- op.142

Regolith in the air -宙のレゴリス for Xylophone Trio- op.142

・楽器編成:木琴三重奏(オプションパートあり四重奏、五重奏でも演奏可)
・使用楽器:3 Xylophone
・演奏時間:約5分
・脱稿日:2017.08.17
・初演日:2017.10.28
・初演者:南十勝打楽器合奏団

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<解説>
この曲は山本正史さんの委嘱によって作曲された、こおろぎ社の卓上木琴(Eco32)2台とXylophoneの為の木琴三重奏です。オプションパートがあり、四重奏や五重奏としても演奏できます。
普段は曲名やテーマを決めてから作曲をするのですが、この曲は曲名などが決まらぬまま作曲をしていたので、曲を書いている途中で僕が書きたかいことはなにかを整理してみました。
その結果、比較的簡単なフレーズを重ね合わせて充実したアンサンブルを作ることと、初めて聴いた人が親しみを感じるような分かりやすい旋律の曲を作るということだと確認しました。
また同時期に、委嘱を受けた山本さんがお住いの北海道で、民間初のロケットの打ち上げが失敗したというニュースがありました。様々な試験を“重ねて”作り上げられた「ロケット」が、「打ち上げ」という“分かりやすい”形を伴っていることが、なんだか作曲中だったこの曲と連動している部分がある気がしました。
ロケットは宙で分解してしまいましたが、消えてなくなったのではなく次に繋がるデータや経験が重なっていきます。ニュース映像を見ながら、ロケットは音のように消えたけれど何かが宙に重なったようにも感じられました。
レゴリスとは月の砂など表層に重なるもののことを指します。一人一人のシンプルな音はすぐに消えてしまうけれど、宙空で重なり合ってレゴリスのような音楽になりますように。ひいては、多くの方に親しみを持っていただけますように。


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PAN to DGK - for Piano and Percussion - op.141

PAN to DGK - for Piano and Percussion - op.141

 Ⅰ.AVMRA
 Ⅱ.HSO
 Ⅲ.NKFJT

・楽器編成: Multi Percussion、Piano
・使用楽器:Hose(G音&C音),Bongo,2 WoodBlocks,Tri.,sus.Cym.,木魚,Tamb.,shrilling chicken
・演奏時間:?
・脱稿日:2017.06.20
・初演日:?
・初演者:?

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<解説>
この曲は山本正史氏から「誰もが知っているピアノ曲を伴奏に打楽器を演奏する楽曲」の作曲依頼を受けて、2017年春から夏にかけて作曲された3つの楽章からなる楽曲です。

1楽章:AVMRAは、Bachの「平均律クラヴィーア第1巻前奏曲第1番」を伴奏としており、グノーが「アヴェ・マリア」を作曲した例を参考に、Bachを伴奏にホースで一定の音程を鳴らし続ける事が通奏低音ならぬ[通奏高音(逆通奏低音)]のようになり得るのでは?と考えて、作曲したものです。実際に演奏するとかなりシュールな楽曲だと思います。

2楽章:HSOは、山本氏の要望もあってベートーヴェンの「悲愴」を伴奏に演奏します。打楽器はチャイコフスキーの「悲愴」を打楽器で演奏しています。基本的にTimp.マレットを使用した柔らかい音色での演奏が望ましく、明瞭なピアノの音楽と不明瞭な打楽器の音楽とが並走するように、テンポの揺らぎはピアノに打楽器が寄り添うように演奏して欲しいと思っています。但し、Cym.は例外で原曲通り派手に演奏して下さい。

3楽章:NKFJTは、主に作者不詳の「ネコ踏んじゃった」を伴奏に演奏します。打楽器はこの曲の歌詞の母音を打楽器に変換しています。(あ→木魚、い→Tamb.、う→りん、え→WB高、お→WB低)コミカルで、テクニカルで、リズミカルな楽章です。

楽曲名の読み方は「ピーエーエヌ」とアルファベット読みでも構いませんが、個人的には「パンと打楽器」(注:パンと葡萄酒に由来)がお好みです。

 

Central Dogma -0157:H7- -for cember quartet - op.143

Central Dogma -0157:H7- -for cember quartet - op.143

 Ⅰ.DNA
 Ⅱ.mRNA
 Ⅲ.AMINO

・楽器編成:室内楽(四重奏)
・使用楽器:Fl.Vc.Mar.Piano
・演奏時間:約16分
・脱稿日:2017.06.20
・初演日:2018.01.27
・初演者:田原加奈子(Fl.)、高橋裕紀(Vc.)、高橋若菜(Mar.)、谷脇瑛子(Pf.)

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<解説>

この楽曲は腸管出血性大腸菌O157たんぱく質(ベロ毒素)のDNA情報をもとに2008年に作曲したピアノ曲室内楽に再構成した楽曲で、田原加奈子・高橋裕紀・高橋若菜・谷脇瑛子によって初演されました。
1楽章ではDNA情報を、2楽章ではmRNA情報を、3楽章ではアミノ酸情報を音楽に変換しています。
室内楽版の作曲にあたり、どの楽器がどの音を担うべきか、それもDNA情報に由来すべきか悩んだのですが、DNA情報に縛られ過ぎずに再構成することにしました。
演奏に際しては一般的な音楽ではあまり見ない音の跳躍などがあり演奏が困難な部分もありましたが、楽曲としては不意に美しい旋律が聞こえたりリズミックなシーンが現れたりと、人を死に追いやる可能性のあるベロ毒素を基になっている割には面白いな、と個人的には感じています。


[作曲に用いたDNAデータ]

nucleotide sequence(948 nt)

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☆楽譜

Escena Uruguay -ウルグアイの情景 for Baby-Milk-Can Trio – op.140

Escena Uruguay -ウルグアイの情景 for Baby-Milk-Can Trio – op.140

・楽器編成:ミルク缶三重奏
・使用楽器:3 Baby Milk Cans
・演奏時間:約3分
・脱稿日:2017.05.27
・初演日:2017.06.10
・初演者:伊藤諭+浜谷安里+渡邉達弘

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<解説>
この曲は2017年6月10日に開催された「もんてん小学校楽器大行進vol.9」のために作曲した粉ミルク缶三重奏です。
昨年我が家に子どもが誕生し、飲み終えた粉ミルクの空き缶が増えてしまったとき、子どもがそれを叩いて遊んでいるのを見て、「今、このときにしか書けない曲かもしれない」と思い作曲に着手しました。
楽曲はウルグアイの伝統音楽「カンドンベ」を下敷きに、能の三番三(さんばそう)やサンバなどの要素を加えて構成されているにもかかわらず、南米と日本音楽の融合(?)みたいな風味を一切感じさせないアホらしい音楽になっています。
この曲を作曲するにあたり“ウルグアイ”の意味を調べたところ、“uru”(ウルという名の鳥の)“gua”(飛ぶ)”y”(川)という意味であることを知りました。何とも情景的な原義に感動し、“赤ん坊が叩く缶”と“ウルグアイ”という言葉に近しい香りを感じました。この曲はウルグアイの情景であり、赤ん坊が缶を叩く日常の情景でもあるのです。
・・・育児で疲れてるかな(笑)。

●DEMO
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☆楽譜

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Poly Pers Piece -for WoodBlock Duo- op.139

Poly Pers Piece -for WoodBlock Duo- op.139

・楽器編成:ウッドブロック二重奏
・使用楽器:2 WoodBlocks
・演奏時間:約3分
・脱稿日:2017.04.08
・初演日:2017.06.10
・初演者:伊藤諭+渡邉達弘

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<解説>
この曲は2017年4月に作曲し、同年6月11日に伊藤諭と渡邉達弘によって初演された、2人の演奏者が異なるテンポのクリックを聞きながら演奏する楽曲です。
近年、特殊なポリリズムを曲をよく作曲していたのですが、それは「異なるテンポの並走感」を目指して取り組んでいたためです。また、ポリリズムでは並走感が感じられても、異なるテンポで演奏するポリBPMではバラバラに聴こえるだけで並走感は得られないと考え、敬遠していました。
そこでこの曲では、実験的に様々なポリBPMを考えて構成しました。具体的には“フェイズ”を目指したポリBPM、“複雑なリズム”を目指した整数比ポリBPM、“架空のテンポの偶発”を目指した非整数比ポリBPM+ポリリズムの3つです。
作曲後にDEMOを聞いて驚きました。人間の「是正能力」が多少のズレをなかったことにして、ズレているのにズレを感知できないのです。ズレてバラバラに聴こえると思っていた音を「関係性がある。しかしその関係性がにわかには感知できない。」と感知して、明確なテンポやリズムのない”自然界のリズム”のようにさえ感じられたのです。
複数のパースによって描かれた絵画のように、或いは複数の星の重力を同時に感じることで上下の概念を見失うように、または透視図のように、この音楽がいろいろな不思議な形で聴こえますように。

演奏者は予め用意された専用クリックを聞きながら演奏してください。
(クリックは下記URLよりダウンロードできます。)

●演奏用クリック

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○演奏動画(音源)

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☆楽譜

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為替見!ユーロビートⅡ -アベノ・ミックス-(ユーロ円為替チャート2012~2015) op.138

為替見!ユーロビートⅡ -アベノ・ミックス-(ユーロ円為替チャート2012~2015) op.138 

・楽器編成:スライドホイッスル二重奏
・使用楽器: 2 Slide Whistle
・演奏時間:約3分
・脱稿日:2016.02.14
・初演日:2016.02.27
・初演者:伊藤諭+渡邉達弘

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<解説>
この曲は2016年2月に作曲し、同年2月27日に伊藤諭と渡邉達弘によって初演されました。
2012年に作曲された『為替見!ユーロビート -ユーロ円為替チャート 1999~2012-』の続編となる本曲は、2012年から2016年までの4年間、つまり当時の安倍晋三首相が表明した「三本の矢」を柱とする経済政策「アベノミクス」が開始してから4年間のユーロ円為替チャート(下図)を参考に、前回と同様の手法でスライドホイッスル二重奏として作曲したものです。
前作と比較して4年間と短い範囲を楽曲化していますが、この4年間は民主政権からの政権交代東京オリンピック開催決定、消費税5%から8%へ増税、TPP大筋合意など本当に多くのことがありました。そのため、前作に負けない音高の変化(=為替の変化)が見られると思い作曲しました。成果や如何に!

※本作の再演や譜面の販売は予定しておりません。